新規個別指導の指導計画(厚生局)
新規個別指導については、開業した年度の3月に翌年の指導計画が立てられます。該当する保険医療機関さんの指導をいつ行うかが検討されます。本来、集団的個別指導が行われるのが、開業6か月程度とはなっていますが、わたしは、新規個別指導を行うのは、レセプトを使っての指導であるので、開業後1年が目安と考えます。新規個別指導には、およそ10名程度、2ヵ月分のレセプトを厚生局で準備しなくてはなりません。(厚生局さんも保険者あて、出力(印刷)依頼します。)
開業後すぐでは、クリニックさんの患者さんの傾向がつかみにくいと思われますし、軌道に乗ってくるのも、3か月から半年程度の期間は必要です。さらに、厚生局から提出依頼を行ってから、届くまでを考慮しなくてはなりません。
実施予定とする月から半年ほど前のレセプトを対象とし、指導の予定日、3か月前くらいに保険者あて依頼をかけます。そして、1か月程度で厚生局に該当レセプトが到着、通知をする時期(新規個別指導を行う1月ほど前)には、新規個別指導の準備が整うものと考えられます。(※想定ですので、実際にどのように行われているかはわかりません。)
対象となる保険医療機関
指導対象となるのは新規の開業クリニックさんです。法人化後に代表者が変更になったクリニックさんが対象になることがあります。
新規個別指導、持参資料から具体的にどのようなことが指導される?
新規個別指導の持参書類については、『新米開業医の通過儀礼・・・厚生局による「新規指導」の乗り切り方』(幻冬舎GOLD ONLINEより)との記事があるので、参考とさせていただきます。
新規個別指導時の「持参資料」として通知されている内容を基に具体的に何が指導の対象となっているのかを考えます。これらへの対応ができていなければならないことです。
反対に常日頃の診療の際にできているのであれば、特に「指導・監査」への対応をする必要はありません。
診療録
(1) 診療録(指定する患者に関わる、1号紙、2号紙、3号紙、添付してあるものすべて)
初診時からのすべての記録を持参すること。電子カルテで管理してある場合については、療養担当規則に定める様式に沿って、診療録等すべての関係書類を出力(印刷)して持参すること。
・ カルテの表紙部分である1号紙について、療養担当規則に定める様式に沿ってあるかどうかを確認します。
様式に定める事項の有無:職務上かどうか記載又は表示が可能か。傷病手当金請求書を発行と労務不能期間等の記載の有無。
入院期間の記載欄の表示の有無。保険情報(主保険、公費負担等の記載、表示)の有無。傷病名の記載と月日、転記と転記月日の記載、表示の有無。
・ 傷病名 等に関して 傷病名については、削除することのないように、転記を記載する。主病の指定を適正に行うこと。病名として妥当なものを記載する。矛盾した病名の無いように。急性、慢性、左右の別、部位の不記載、詳細な病名記載を行う。単なる状態を記載しない。医学的根拠のない病名の記載はしない。(いわゆるレセプト病名の記載は不可) 傷病名の整理を行うこと。長期の急性病名、疑い病名は不可。病名の重複は不可。
・ 2号紙への月日の記載のない診療録は不可。複数の医師の記載がある場合は、医師名の記載等が必要。 明らかな後日記載内容の追加(遅滞なく記載すること)は不可であり、無診察診療や改ざん等が疑われる。
・ 3号紙の不備の有無。月日と点数、一部負担金の記載の有無。査定等による減点に伴う返金の有無。
特定保険医療材料、薬剤等の購入・納品伝票
(2) 特定保険医療材料、薬剤等の購入・納品伝票(直近1年分程度)
・ 購入医療材料と請求医療材料について、未購入のものの振替請求の有無。後発医薬品の投薬と先発医薬品の診療報酬請求の有無等。購入金額と請求金額のチェック。
酸素の購入・納品伝票
(3) 酸素の購入・納品伝票(直近1年分程度)
・ 購入数量、金額と届出内容の差額の有無。
薬剤情報提供料にかかる文書
(4) 薬剤情報提供料にかかる文書
・ 未指導患者の算定の有無。 記載内容の確認(内容の乏しいものの有無)
返戻・減点通知
(5) 審査・支払機関からの返戻・増減点通知に関する書類(直近1年分程度)
・ 返戻に対する措置の状況(理由に対する回答等)。増減点通知に関しては医師自ら閲覧し、内容の、検討。以後の診療や保険請求に反映させるなどの活用が図られているかの確認。
院外処方せん
(6) 院外処方せんを発行している場合は処方せんの用紙。ただし、複写式を使用している場合は、控え(指定期日以降)を持参すること。
・ 現行書式に合致しているかの確認。記載内容が正当かの確認。加算と記載内容(指示)の確認。
日計表(一部負担金の内訳)
(7) 患者ごとの一部負担金徴収に係る帳簿または患者ごとの内訳のある日計表等(別途通知の診療月分)
・ 適正な一部負担金の受領の有無。不当な減額の有無。職員の受診の有無と負担金の徴収金額の確認。
診療業務・診療報酬請求事務の手順
(8) 診療業務(患者の受付から帰るまでの院内における業務)及び診療報酬請求事務(診療報酬明細書の作成から審査支払い機関に請求するまでの事務)の手順についての流れ図
・ 無診察診療の有無。(診察なしでの投薬等) ・診療報酬請求事務の医師の関与状況(事務任せは不可、医師の関与状況の把握)
診療報酬請求事務外部委託契約書
(9) 診療報酬請求事務等を外部委託している場合は、その契約書
・ 契約に基づく業務委託の状況把握。違法等の有無の確認。医師の関与状況。
診療費請求書・領収書
(10) 診療費請求書・領収書の様式。ただし、複写式の様式を使用している場合は別途連絡する診療月以降の控えすべて
・ 届出内容との確認。 印字内容の確認。明細等の有無の確認。
保険外負担一覧表
(11) 保険外負担の一覧表
・ 保険外負担として、相応しいか否かの確認。 説明と同意、同意書の取得の確認。 受領内容と掲示内容の確認。
(保険外負担分全ての掲示が必要。)
施設基準届出関係書類
(12) 施設基準に係る届出関係書類
・ 施設基準と掲示内容の確認。掲示の過不足の確認。適合状況の確認。(病院における適時調査では事務担当の対応は、ここが大きなウェートを占めます。)
保険医療機関の概況(現況書:指定様式)
(13) 保険医療機関の概況(現況書)
・ 届出内容との相違の確認。不自然な患者数の場合の無診察診療疑い。医療法の充足率の確認。
ということで、現在入手し得る持参資料とそれらに基づいての新規個別指導・個別指導の内容について記載してみました。
入手時点との時間的相違がありますので、通知が届き次第、内容を再確認して過不足の無いよう、当日は万全を期して出席していただかなくてはなりません。
(正当な理由がない欠席については、すぐに監査に移行してしまいますのでご注意を。)
なお、重複しますが、適時調査での事前提出資料で、『掲示物の写し』の中に、①「施設基準等」②「入院時食事療養費」③「保険外併用療養費」④「保険外負担」と記載があります。
これらの内容についてわかりますでしょうか?掲示の義務があります。そして、後者の2つである③④については、丁寧な内容の説明と同意が必要です。そして、同意の証拠として、同意書をいただかなくてはなりません。対応できていらっしゃいますか?
保険診療のサポート契約はどこまで?
診療報酬請求・保険診療のサポート契約を結んでいらっしゃる保険医療機関さんもあると思います。新規個別指導・個別指導、適時調査への対策についても含まれているのであれば、ここまでのことが対策出来ていなければなりません。
繰り返しになりますが、常日頃の診療にどのようにして組み込み、これらを遵守しているかです。
本当に事前対策はきちんとできているのでしょうか。これらの対応について、通知がきてから行うこととなっているのであれば、内容の見直しが必要です。
厚生局さんは、保険診療を実施しているかを点検するプロです。小手先での対策ではすぐに見抜かれます。
行政書士 佐々木浩哉